DIYでのメジャー(巻き尺)の使い方:正確に測る基本と注意点
DIY作業を始める際、何よりも重要となるのが「正確な採寸」です。この工程がずさんだと、どんなに丁寧に作業を進めても、思い通りの仕上がりにならなかったり、材料を無駄にしてしまったりする原因となります。そして、採寸に欠かせない基本中の基本の工具が「メジャー」、一般的には「巻き尺」と呼ばれるものです。
この記事では、DIY初心者の方に向けて、メジャーの種類や各部の名称、そして何よりも大切な「正確な測り方」と「安全な使い方」について、丁寧に解説します。安全で正確なDIYのためにも、メジャーの基本をしっかりと押さえましょう。
メジャー(巻き尺)とは?
メジャー(巻き尺)は、長さを測るための工具です。テープ状の目盛り付きの帯を伸ばして使用し、使い終わったら巻き取ってコンパクトに収納できます。DIYや日曜大工、家具の配置検討など、さまざまな場面で活躍します。
メジャーにはいくつかの種類がありますが、DIYで主に使用されるのは「コンベックスメジャー」と呼ばれる、金属(主にスチール)やグラスファイバー製のテープが使用されているものです。テープにある程度の硬さがあるため、伸ばしたときに折れ曲がりにくく、一人でも比較的長い距離を測るのに適しています。また、洋裁などで使われる柔らかい布製のメジャーもありますが、こちらは直線距離の測定にはあまり向きません。この記事では、DIYで主に使うコンベックスメジャーを中心に解説します。
コンベックスメジャーの各部名称と役割
コンベックスメジャーの基本的な構造を理解することは、正しく使うために役立ちます。
- 本体ケース: テープを収納している部分です。プラスチック製や金属製などがあります。
- テープ: 目盛りが付いている帯状の部分です。スチール製にナイロンコーティングされたものが一般的で、耐久性や防錆性に優れています。
- フック(爪): テープの先端に付いている金属製の部品です。測定対象の端に引っ掛けて使用します。
- ストッパー: テープを好きな位置で固定するためのボタンやレバーです。押すとテープが固定され、離すと巻き取り可能になります。
- ベルトクリップ: 本体ケースの裏側などについており、ベルトなどに引っ掛けて携帯できます。
特に重要なのが「フック(爪)」です。このフックは、実はわずかにグラグラと動くようになっています。これは不良ではなく、正確に測るための工夫です。
- 外側を測る場合: 木材などの外側の端にフックを引っ掛けて測る際、フックは手前に引かれる力でテープの端から外側に移動し、ぴったりゼロの位置で止まります。
- 内側を測る場合: 箱の内側や窓枠の内側など、フックを引っ掛けられない部分を測る際、フックを壁などに押し当てて測ります。このとき、フックは押し込まれる力でテープの端から内側に移動し、テープのゼロ点がフックの厚み分だけ内側になります。
この「遊び」があることで、フックの外側から測る場合も、フックの内側(つまりテープのゼロ点)から測る場合も、フックの厚みを意識せずに正確に測れるようになっています。このフックの仕組みを理解しておきましょう。
また、本体ケースには、その本体自体の長さがミリメートルで表示されている場合があります。これは、内側の寸法を測る際に、テープの読み取り値に本体の長さを足すことで、より正確な寸法が得られるためです。この本体の長さも確認しておくと良いでしょう。
正しい測り方の基本ステップ
正確に測るための基本的な手順とコツを解説します。
- 測る位置を確認する: どこからどこまでを測るのか、測定の起点と終点を明確にします。
- フックを正確に合わせる: 測定の起点となる端に、フックをしっかりと引っ掛けます。フックに遊びがあることを意識し、外側を測る場合は引っ掛けて、内側を測る場合は押し当てて使用します。
- テープをまっすぐ伸ばす: 測定の終点まで、テープをたるみやねじれがないようにまっすぐ伸ばします。これが正確な測定のために最も重要なポイントの一つです。テープがねじれていると、正しい長さが測れません。特に長い距離を測る際は、テープが垂れ下がったり、横に曲がったりしないよう注意が必要です。
- 測定箇所を読み取る: 測定の終点にテープの目盛りを合わせ、数値を正確に読み取ります。目盛りに目を近づけ、真上から見るようにすると読み間違いを防げます。
- 数値を記録する: 読み取った数値を、メモ帳などに正確に記録します。曖昧なメモは後々の間違いにつながります。必要であれば、測った箇所を示す簡単なスケッチも加えると良いでしょう。
- 複数回測る: 可能であれば、同じ箇所を複数回測ることをおすすめします。毎回同じ数値になるか確認することで、測定ミスを防ぐことができます。
内側寸法を正確に測るコツ
壁と壁の間や箱の内部など、フックを引っ掛けられない内側寸法を測る場合は、以下の方法があります。
- フックを押し当てる: テープのゼロ点を壁に押し当て、もう一方の壁までの長さを測ります。このとき、フックの遊びを利用して、ゼロ点がテープの先端から少し内側に入っていることを確認します。
- 本体ケースの長さを利用する: テープを伸ばし、本体ケースを壁に押し当てます。もう一方の壁でテープの目盛りを読み取り、それに本体ケースに記載されている長さを足します。例えば、本体ケースの長さが80mmと記載されており、テープの読み取りが500mmだった場合、実際の長さは580mmとなります。こちらの方が、長い内側寸法を一人で測る際には便利です。
長いものを一人で測る際のコツ
長い木材や壁の長さを一人で測る場合、テープが途中で折れ曲がったり垂れ下がったりしやすいです。
- テープを地面や床に沿わせる: 可能であれば、テープを測定対象に沿わせるだけでなく、地面や床に置いて測ると安定します。
- ストッパーを活用する: 途中の区切りが良いところでストッパーを使ってテープを固定し、少しずつ測っていく方法も有効です。
安全な使用方法と注意点
メジャーは比較的安全な工具ですが、誤った使い方をするとケガをする可能性があります。特に以下の点に注意しましょう。
- テープの巻き取りに注意: テープが本体ケースに勢いよく巻き取られる際、指や衣服を挟まないように十分注意してください。特に金属製のテープはエッジが鋭利な場合があり、高速で巻き取られると指を切る危険があります。巻き取り速度をコントロールできる機能が付いているメジャーを選んだり、ストッパーを使いながらゆっくりと巻き取ったりすることをおすすめします。
- テープのエッジに注意: テープの側面(エッジ)は、素材によっては鋭くなっていることがあります。テープを扱う際は、エッジで指を切らないように注意してください。軍手や作業用手袋を着用することも、ケガの予防につながります。
- 無理な使い方をしない: テープを必要以上に引っ張ったり、無理な角度に曲げたりすると、テープが折れたり破損したりする原因となります。破損したメジャーは思わぬケガにつながる可能性があるため、使用を中止してください。
- 測定時以外はテープを巻き取る: 使用しないときは、テープを本体ケースにしっかりと巻き取っておきましょう。伸ばしたまま放置すると、テープが曲がったり、他の物に引っ掛けて転倒したりする危険があります。
まとめ
メジャー(巻き尺)は、DIYの全ての工程の土台となる「採寸」を担う非常に重要な工具です。正確な採寸は、作業の成功だけでなく、材料の無駄をなくし、安全な作業環境を保つためにも欠かせません。
この記事で解説したメジャーの種類や各部の名称、そして最も重要な「正確な測り方」と「安全な使用方法」を理解し、実践することで、あなたのDIY作業はよりスムーズで確実なものになるでしょう。フックの遊びの仕組みや、内側寸法の測り方、テープの巻き取り時の注意点など、小さなことですが、これらを知っているかいないかで、安全性も作業精度も大きく変わってきます。
ぜひ、お手持ちのメジャーを手に取り、この記事の内容を確認しながら実際にテープを伸ばしたり巻き取ったりしてみてください。基本をマスターし、安全に楽しくDIYを進めましょう。正確な採寸が、あなたの素晴らしい作品づくりの第一歩となるはずです。